蛇ににらまれた…
(「かえるの絵本スキーに30の御題」作品)
「あれは、怖かったな……」
コロナの街の裏山、その中腹にある、のどかな空き地。
その真ん中、雲ひとつない真っ青な空の下で、大地に寝そべった三つの影は、そう呟いた。
苦い記憶。
三人の頭に、かつて背の高い黒髪の相手に、あっさりのされた思い出がよぎる。
「……なんでオレたち、またここに来てるんだ?」
嫌な思い出に、顔をゆがめた一人が言うと、他にゆっくりできる場所なんてないだろう、とめんどくさげに別の一人がぼやく。
ああ、そうか……と質問した者が空を見上げたまま何度もうなずいていると、最後の一人、最初に呟いた人影が、ふう、と大きくため息をついた。
――しかし、あれは本当に怖かった。特に目が怖かった。
――ああ、目を見た時点で脅えて、
まるで相手にならなかったもんな、オレたち。
寝そべったまま、三人は、あの時のこと、いかに相手が怖かったかを口々に語る。
「……これ、なんていったっけ。いい言葉があったよな……」
語りが騒ぎになるほど、三人全員が仰向けの姿勢から起き上がるほどに、いかに怖かったか、いかに相手が強かったかをめいっぱい語りつくしたころ、ぽつり、と一人が呟いた。
その言葉に、三人はうなりをもらして考え込む。
「……えーと、かえるに食われたスライム?」
「いや、かえるは後だろう」
「じゃあスライムに食われたかえる?」
「スライムはあんまりかえる食わないぞ」
「じゃああれか、竜か」
「でかいよ。つーか食うんだっけ?なんか違わなかったか?」
しばらく正解の出ない回答を繰り返した後、三人はもう一度うなりをもらし、ぱたん、と寝転がった。
「……とりあえず、今度からはネコババはやめようぜ」
「そうだな。欲しいものがあったら、堂々と人間を襲おうぜ」
「そんで倒れてから奪おう。で、敵わなかったら逃げよう」
「そうそう。それが一番だ」
寝転がったまま、三人は意見の一致に頷き、そして本日一番の大きなため息をつく。
……かつて、落ちていた指輪のネコババを企み、ミーユにのされたコボルト三匹は、くわばらくわばら、と人の使う祈りの言葉を呟いた。
(from.さまよってコロナの街)
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かえるの絵本スキーに30の御題
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