ギルド
(「かえるの絵本スキーに30の御題」作品)
「ギルドと言うのは、ある基準を元に、
たくさんの人が集まるところですね。
基準と言うより、職業といった方が
この街ではわかりやすいかもしれません。
商人とか、盗賊とか……そういう人たちが集まって、
その中での決まりを決めたり、お互いの技術を提供したり、
新しくその職業につきたい人にいろいろ教えたりして、
みんながケンカせずに、楽しくその職業について、
人の役にたつようにしたのがギルド、と言うものですね」
……急な質問に、神官見習いの少年、クリスがそう説明したのは確か、春のことだった。
冒険者の多い、この街のこと。
訓練を受けるために、または日雇いの人員として、時には怪我や病気の治療にと、クリスが働く神殿を訪れる冒険者は、後を絶たない。
その中でもクリスがよく見る顔、見ない顔の違いはあるが……この質問をしたのは、四月に初めてこの街にやって来た冒険者だった。
話によると、呪いを受けていて記憶がないそうで。
そのせいか、わからないことが多いらしく、時々、こうして突拍子もない質問をされる。
確かに初対面の時、わからないことがあったら聞いてください、とクリスはあいさつしたが……まさか自分に、ギルドとは何か、を聞かれるとは思わず、聞かれた時は面食らったのをよく覚えている。
あれから季節は移り、秋となった今では、さすがに質問も減り、本人もしっかりしてきたように見えるが……それでもその冒険者の顔を見るたび、あのことを思い出す。
その冒険者が掃除人員としてやって来た日の休憩中、クリスはふっと相手に尋ねてみた。
「ギルドってなんのことか、覚えましたか?」
相手は一瞬考え、それから、実はあれからもう一つわからないことが増えた、と言う。
クリスがなんですか、と聞き返すと、冒険者は言った。
ギルドが、みんなが集まって、楽しくみんなの役に立つようにした場所のことだと言うのなら……どうしてこの神殿やコロナの街は、神官ギルドや冒険者ギルドと呼ばないのか、と。
クリスはしばらく考え、それからぽつりと言った。
……ミステリーですね、と。
14:精霊の囁きを読む
16:祈りを読む
かえるの絵本スキーに30の御題
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