ゲームの合間に


 宇宙の災厄「グノーシア」汚染が発生した宇宙船で。
 乗員たちによる、グノーシアを発見するための、話し合いが行われ。
 様々な過程を経て、乗員の一人がコールドスリープされた。

 ……これはその、合間。
 会議が終わって、夜を迎えた……その日の夜の、船内での話。


「なあシュナ
 さっきの会議中、シピがジナと協力を結んだとき、すげえ顔してなかったか?」
「……え?」

 食堂で、食事をしながら。
 テーブルをはさみ、前の席に座るしげみちからの指摘に、私は……返す言葉を失った。

「あーしてたしてた
 ナニナニ?シュナ、お前シピに惚れてたの?」

 しげみちの隣の席から、沙明が会話に入ってくる。
 ……そういう、ことじゃない。

 今回の私は、グノーシア。
 人間の乗員をだまし、グノーシアの勝利を目指すもの。
 ……そして乗員と見せかけたシピは、その仲間……私と同じ、グノーシアで。

 会議中、そのシピがジナに協力をもうしこみ、ジナがシピを信じる……そう言った時、思ったのだ。

 (シピは、ジナをだまして利用するつもりなんだ……)と。

 そのとき、私はたしかに、誠実に見えたシピのその行動に、勝手な失望と悲しみを覚えた。……それが、顔に出てしまっていたのだろう。

 しかし、ここでそのことを言うわけには、私とシピがグノーシアだと、断じてバレるわけにはいかない。
 なんとか……なんとかごまかさないと。
 そう思った私は言った。

「いや、そうじゃなくて……思っちゃったの。シピがジナと協力を結ぶの見て。
 なんか……さわやかに一瞬で女の子からの信用を得たシピが……まぶしくって……ちょっと、妬ましい……って。
 ……それで気づかないうちに、顔に出た……そんな顔、してたかも」

「シュナ……」

 しげみちがそこで言葉を切る。
 ……うまく、ごまかせただろうか。

「わかる、わかるぜシュナ!オレも同じだ!よくわかる!」

 ……ごまかせてたようだ。それも、思ったよりもずっと効果的に。

「……いや、しげみちはわかるけどよ……
 シュナはなんでモテない男メンタルなんだよ、おかしくね?」
「オレはわかるってなんだよ」
「今食いつくのはそっちじゃねえよ。
 つーかシュナ、お前顔かわいいくせに、なんで心がモテない男なわけ?
 お前はどっちかっつーともっとモテる寄り、光の側の人間だろーが、どう見ても」

「…………」

・照れる

・真面目にごまかす



「え、ちょっ……や、やめてよ、かわいいとか。そんな。……ホント……やめてくれる?……恥ずかしいから」
「…………」
「…………」
「おいおい、何言ってんだよ
 ……俺はマジで、お前のことかわいいって思ってるぜ?」
「……沙明……今ここでマジ口説きに移行すんなよ。オレはここでどんな顔して飯食ってりゃいいんだよ」
「なーに言ってんだよ、チャンスの女神は前髪ンフーフつーだろ?すぐいかねぇとつかめるもんもつかめねぇんだよ
 なぁ、シュナ?」
「…………」

・助けを求める

・ますます照れる



「おいおい、何やってんだよ」
「シピ」
「……そこまでにしてくれよ、シュナは俺の恋人なんだ」
「あ?
 ……ンだよ、それ」
「え?そうなのか?シュナ」
「……う、うん。ま、まあ……」
「……知られると恥ずかしいってシュナが言うから黙ってたけどよ、そういうわけなんだ。もう食べ終わっただろ、行こうぜ、シュナ」
「……うん」

「……っくしょう、イけると思ったのによ」
「つーか、シピのヤツ……シュナとジナの二又……?に、憎い……!」

「シピ……」
「あー……悪かったな。
 勝手に恋人とか言って」
「ううん、助かった、ありがとう。
 それに、そういうことにした方がいいかも。……二人で話してても、不自然に見られにくいもの」
「……そう、だな。……そうするか」


 そして。
 この次のグノーシア発見会議。
 しげみちと沙明が、会議の内容をすべて無視して、そろってシピに投票したことは言うまでもない……。

 ED-1
 『正しくは猫と三又・あるいは猫が二又』


・一つ前の選択肢に戻る

・二つ前の選択肢に戻る



「だから……やめてってば
 本当にダメなの、そういうの
 ……慣れてないから」
「……沙明」
「なんだよ」
「いいものを見れた、感謝する」
「ハッ! いいってコトよ」
「……ちょっと……人からかって遊ぶの、やめてくれない?楽しいの?それ」
「おいおい、からかってなんかねェよ
 俺は本気も本気だぜ?
 マジでかわいいって思ってんだよ、お前のこと」
「沙明の言い方はともかく……
 オレも賛成だぜ、シュナはかわいいぞ、普段も、そうやって照れてるところも
 なんつーか、ぐっとくるな!」
「…………」


 その後。
 沙明としげみちが、2日続けてグノーシアに消滅させられたことは、言うまでもない……。

 ED-2
 『嫌よ嫌よは『好き』ではない』


・一つ前の選択肢に戻る

・二つ前の選択肢に戻る



「うーん、仮に沙明の言ったように
 私の顔が、客観的に見て『かわいい』と呼べる範囲……としてもよ?
 イコールモテる、とは限らないし、仮にモテてもそれで得られるのは『モテる女』なメンタル。なくなるのは『モテない女』メンタルであって。
 ……私の中の『モテない男』が満たされる、収まることには……ならなくない?
 だって男にモテようと、たくさんの女の子にモテなければ、それはいつまでもそのままよ?」
「……だからなんでシュナは、心にそんな『モテない男』を飼ってるんだよ」
「いや、わかる、わかるぜシュナ」
「いや、それこそしげみちはなんでだよ」
「そっちじゃなくて、顔がよくてもモテるとは限らないって方だよ」
「そっち……」

「いやーオレもな?いくつかゲームで、女の子との恋愛要素……があるものをやったことがあるんだけどな?
 その中で、容姿とか見た目とか魅力とかの数値を上げると……とにかくゲームの中で、すごいかっこいい見た目になれるわけだ。
 すると、その見た目につられた女の子たちからモテモテになって、デートができるんだけどよ。
 いざデートしてみたら、選択肢というか、うまく相手のほしい言葉が返せなくてな。
 全っ然会話が盛り上がらなくて、デートしたのにまったく好かれず、悲しく終わっちまうんだよ。
 ……見た目だけよくてもダメ、中身も見た目に釣り合わないと、結局ダメになっちまう。
 見た目がいいからって、絶対にモテるとか、モテるのが当たり前、とは限らないんだよなあ……」
「…………」
「わかる!わかるわ、しげみち!
 こっちはよかれ、と思って選んだ選択肢で怒られたりがっかりされると、すごく悲しかったりするのよね!
 こっちは喜んでほしい、笑顔が見たいだけなのに!」
「おお、シュナ……いや、同士よ……!」
「いやお前もわかんのかよ!
 シュナ、お前もそんなゲームばっかやってるからモテない男メンタルが消えないんだろ!?
 二度とすんな!二度と!」
「えー私ゲーム好きなのにー」
「禁止!もう禁止!」

『沙明によりシュナのゲーム(恋愛)プレイが禁止になりました』

「えー、何よ、しげみちはいいのー?」
「しげみちはいい!」
「……なあ沙明、オマエずーっと、オレに失礼すぎじゃね?」

 ED-3
 『ときめきのメモリアル』


・一つ前の選択肢に戻る


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あとがき

 ・「しげみちとゲームの話でキャッキャしたい!」&「沙明にお笑い的な意味ではげしくツッコミ入れてほしい!」という衝動で書きました。ぶっちゃけ。

 ・シピとか分岐はおまけ。ふんわり話の構想が頭にあったときに、ゲームで実際に主人公がグノーシアで、グノーシア仲間のシピがジナに協力を求めて成功してたのを見たので、なんとなーく使っただけです。

 ・沙明は「成人から墓場まで、大人の人間の女性なら全部あり、顔もかわいいと思ってる」などと勝手に思ってるので、実際の主人公がかわいいか、は決めてません。アニメの主人公ことユーリくん、たぶん男の子だけどかわいいなーと思ってゲームクリア直後に見てたので、多少そのユーリくんイメージが入ってるのもあるかもですが。

 ・ついでに言えば沙明がなぜ「成人からならなんでもあり」と思ったかと言うと「タチの悪いロリコンならもっとゲーム内で死にイベント増えてそう」と思ったからです。大変に失礼。そもそも出身地によって成人年齢自体違いそうだけど。

 ・しげみちと沙明が仲よさげなのは私の勝手な願望です。まあゲームのシステム的に、ありえないことはないかなーと。

 ・細かく言えば娯楽室によくいる沙明もゲームが好きそうな気もしますが、ときメモ的な恋愛ゲームよりも、シンプルにアダルトなゲーム、あるいはゲームセンターのゲームらしいガンアクションとかやってそうなイメージ、勝手に。ていうかそもそも三次元チェス云々のLeViのセリフからその手のアダルトなゲームないかも、娯楽室のラインナップには。まあ私こと作者の感覚というか常識が当てはまってるかも定かではないですが。ビリヤードに要腕4本。

 ・おつきあい、ありがとうございました。

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