たてこもる、君へ

　宇宙の災厄「グノーシア」汚染が発生した宇宙船で。
　乗員たちによる、グノーシアを発見するための、話し合いが行われ。
　様々な過程を経て、乗員の一人がコールドスリープされる……はず、だった。

（このループでは、沙明が初日の会議に出ようとせず、部屋に閉じこもっている……）
（それだけならまだしも『あっついベーゼ』を、会議に出るよう説得に来たセツにしつこく要求してて……このままじゃセツ、また我慢できずに沙明を『やって』しまいそう……）
（前に同じ状況だったループでは、沙明はグノーシア。おそらく今回もそのはずだから、最悪『やって』もしかたないと言えばしかたないんだけど……）
（今回ここに存在するグノーシアは二人、仮に沙明がグノーシアとしても、もう一人存在する。……グノーシア同士は協力してるから、沙明が会議に出るか、そうでなくても話ができれば……あと一人のグノーシアの特定に大きく近づく、人間側の有利になると思う）
（何より、この状況が繰り返されてるってことは……この状況でしか得られない情報が……銀の鍵が求める情報がある可能性が高いということ。つまり、前回とはちがう行動をしないといけない、そういうことだと思うんだけど……）

「俺におねだりしたけりゃ、あっついベーゼとひきかえだ、そう言っただろぉ？」
「くっ……」
（…………）

「あの、沙明？その熱いベーゼ？をするのって……私じゃ、ダメ？」
「！？」
「…………おいおい、マジか？マジで言ってんのかぁ？」
「ええ、本気。そのかわり……まずはこの扉を開けて、部屋に入れてくれる？ベーゼ？はいいけど……恥ずかしいから、他の人に見られるのは嫌だし……それに私、沙明と話がしたいの。……他の人には聞かれたくない、大事な話」
「待ってシュナ！シュナが……シュナがそんなことをする必要はない！」
「セツ……」

・大丈夫、とセツに言った

・言葉が出なかった

　大丈夫、とセツに言った。

「心配しないで、セツ。私は、大丈夫だから」
「……だとしても！私が大丈夫じゃない！よりによってあんな……あんなのとシュナが……私にはシュナが、あの沙明と、同じ部屋で空気を吸うことすら……耐えられない！」
「ちょ、ちょっとセツ、本人の前で、そこまで言わなくても……。た、たしかに沙明は、口が悪いし態度も悪いし、度と場をわきまえないセクハラをやめろって言われてる、本気で殺意抱かれてるってのにやめないし、完全な善意で受け入れてくれた避難先で勝手に部屋を占拠してたてこもる、それも壁に落書きなんて、どんな事情があろうともありえないし、なんでよりによってコイツが助かった、今からでもなかったことに、もう宇宙に捨てよっか、生身で！って思うことも私、たしかにあるけど……そ、それでも……それでも少しは沙明にも、いい……ところ……も……？」
「ない！仮にあったとしても、今、表に出してる態度で、総合評価はマイナスだ！」
「……そう、ね、そうかも」
「……なぁ、お前らさぁ……言葉のナイフが、深く人の心を傷つけるって……知ってるか……？」
『おまえが言うな』

『対策会議への欠席により、沙明様のコールドスリープが決定しました』

ED-1
『ブーメランブーメラン・ブーメランブーメラン
　〜そしてループはくりかえす〜』

・一つ前の選択肢に戻る

　私は……セツの真剣な目に、言葉が出なかった。

（セツ……セツの気持ちは、ありがたいし、嬉しい）
（私だって大事な相手が……セツが、私が本当に嫌いで無理な、信頼できない相手と……って聞いたら、止めずにはいられないもの）
（……けど私、今までループしてきて……セツほど沙明のこと嫌いとか無理とかじゃない、本当は……ちょっと好きかも……って思ったりもするから……キスぐらいなら、別に……いいんだけど）
「え？何、ジェラシー？
　セツまさかお前、俺が他の女とキスするってんで、ジェラってんのかぁ？」
『…………』
「ハッハァ！俺はいいぜ？
　シュナとセツ、お前ら二人まとめて面倒み・て・も！」

「…………うん、あの、セツ……『やって』……いいです」
「ああ、心おきなく！」

『船内から、沙明様の反応が消滅いたしました』

ED-2
『つい二人で……『やって』……しまいました』

・一つ前の選択肢に戻る

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あとがき

　・アニメ７話とか10話の予告の時点で、なんとなくしてた妄想を、年末の勢いで書きました。

　・もちろんあらゆる意味でアニメにはアニメの設定があり、入れなくてはいけないシナリオもあるので、こうもいかないんだろうなーと思いますが。７話とか10話予告の時点で「ベーゼ、とやらに主人公が申し出たらどうなるんだろう」とふわっと思って考えたらだいたいこんな感じになったので。せっかくなので。

　・細かく言えば部屋に入れた後……の妄想もあるのですが、今のところうまくまとまってないので、とりあえず今出せるだけ。

　・おつきあい、ありがとうございました。