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安眠戦隊SHEEP5
〜第二話・白と黒の因縁!〜
安眠レッド(以降赤orレッド)
…メスなのに赤
しかも気弱なリーダー。
安眠ブルー(以降青orブルー)
…おいしいとこどりが好きな二枚目。
リーダーの座を狙っている。
安眠ブラック(以降黒orブラック)
…クールでニヒル。
メンバーの中で射撃率一位。
サングラス。
安眠イエロー(以降黄orイエロー)
…黄色い庶民派。
五体の中では一番普通に近い。
安眠ピンク(以降桃orピンク)
…オスだが世襲制でピンクになった。
メガネ。
(本部に戻ってきた五体)
赤「ふう、今日も何とか
街の安眠を
守ることができましたね……」
?「本当にそうかしら?
あの程度の相手に
あれだけ手間取るなんて……。
やはり、あなたがたに
安眠戦隊を
まかせるわけにはいきません」
桃「あ、あなたは……!安眠ホワイト!」
赤「ピンクさん、ホワイトって……」
桃「先代の副リーダーであり
現在は若手を育てる教官をしています。
先代リーダーのいなくなった今では
実質的なNo1、とも……」
青「そんなことより
さっきのはどういうことだ?
俺たちが安眠戦隊失格だとでも?」
白「……その通りです」
五体「!」
白「あの程度の敵を
必殺技で眠らせることが
できなかっただけにとどまらず
自分たちの弱みまでさらし
最後の手段まで
使うハメになるとは……。
私たちの時代では、考えられません」
黄「で、でも最終的には
相手を眠らせることが
できたわけだし……」
白「その考え方が甘いというのです!」
白「いいですか
ダンスによって
眠らせることができなければ
余計な時間を使い
それは結果的に街の安眠を
さまたげることに他ならないのですよ!
あまつさえ標的の前で
足のフリが……などの
弱点をさらけ出すとは言語道断!
それになにより、レッド!
あなたです!」
赤「わ、私、ですか……?」
白「ええ、あなたは
相手を眠らせることのできるダンスが
踊れなかったにもかかわらず
最後の手段を使うのをためらい
皆の足をひっぱった!
リーダーたるもの
非常事態には真っ先に決断し
実行しなければならない……
それもできないどころか
決断を皆にうながされて
決めるような意志の弱さでは
リーダーとして不適格と
言わざるを得ません!」
赤「……!」
白「何か反論がありますか?」
赤「そ、そんな、私……私は……」
赤(いくら敵とはいえ
そこまでしたくなくて……)
白「自分の意見さえも
はっきりと言えないようでは
それこそリーダーの資格はありません」
赤(なんでそこまで
言われなくちゃならないの?
いくらえらいからって
そもそも私は……!)
白「……反論があるなら言ってみなさい。
それすらできないようなら……
今すぐリーダーを降りなさい!」
赤「……私、リーダーになりたくて
なったわけじゃありません!」
(その場から走り去るレッド)
黄「レッド!」
青「……放っておけ」
黄「な……!?」
青「自分から
リーダーになりたかったわけじゃない
そう言ったのはあいつだ。
ならばいかせてやればいいじゃないか。
望みどおりリーダーを
やめさせてもらえるんだぜ?」
黄「ブルー、お前……!」
桃「やめなさい、二人とも!
我々まで
仲間割れしてどうするんですか!」
黄「けど、こいつが……!」
青「俺は本当のことを言っただけだ」
黄「てめぇ!」
桃「いいかげんにしなさい!
……ブルーも、わざわざイエローを
怒らせるような言い方をしない」
青「……チッ」
桃「……イエロー
説得するにしろ、しないにしろ
リーダーを辞めるか、続けるか……
決めるのはレッド自身です。
それ以前にチーム内で
不和を起こしていては
リーダーが戻ったところで
意味がないでしょう」
黄「…………」
桃「……ただ、僕は
彼女を追いかけることを
制止するつもりもありません。
行きたければ、どうぞイエロー」
黄「……ああ」
(レッドを追い走り去るイエロー)
青「なぜ行かせた?」
桃「……止める必要はないでしょう。
あなたにレッドの説得を
強制する必要がないように」
青「……フン。
どいつもこいつも甘ったれやがって……。
……リーダーになりたくて
なったわけじゃない?
なりたくても
なれなかったやつのことを
考えたことがあるのか……?」
(夕焼けの公園で、ブランコに乗るレッド)
通りすがりの人間
「……ブランコに羊……?
しかも赤いうえにチョッキまで着て
ブランコをこいでる……?
……疲れてるんだな、俺。
今日は早く帰って寝よ……」
赤「……逃げてきちゃった。
私、やっぱりあの人の言うように
リーダーの資格、ないのかなあ?
……リーダー
やめた方がいいのかなあ?」
赤(それに
誰も追いかけてきてくれないし…)
赤「……ダメだな、私……。
誰か追いかけてくれること
期待してる。
そんなことないよって
言ってほしいって思ってる……。
やっぱり、私
リーダーに向いてないや……
こんな時、先代のリーダーだったら……
父さんだったら、少なくとも……
逃げ出したりなんかしないよね
ううん、仮に逃げ出したとしても
自分で帰って
ちゃんと自分の意見を言える。
……突然レッドになれって言われて
せめて父さんみたいになろうって思って
がんばってみたけど……。
ダメだ、絶対無理だよ……」
(下を向き
ブランコの下に落ちた長い影に
気づくレッド)
赤「!」
黒「こんなとこにいたのか、レッド」
赤「ブラックさん……」
黒「…………」
赤「説得、しに来てくれたんですか?」
黒「して欲しいのか?」
赤「……。
私、戻りません。
リーダーなんて、向いてないんです」
黒「そう、思うのか」
赤「だって、私
絶対先代レッドみたいになれません!
先代だったら、逃げ出したりしないし
逃げ出したって
絶対皆で追いかけてきてくれるし
先代だったら、迷ったりしないで……!」
黒「……お前は、先代になりたいのか?」
赤「……だって、ホワイトさんは
私が先代みたいになることを望んで……」
黒「……ホワイトが望むから?
お前はそうしたいのか?」
赤「……それは……私……」
黒「……お前が先代レッドと
同じになる必要はない。
お前は、お前のやり方で戦い
現代のレッドになればいい。
……先代だって、最初から何もかも
うまくいったわけじゃない」
赤「……先代も?
ブラックさん、先代の……
お父さんのこと
知ってるんですか!?」
黒「……なんでも
最初からはうまくいかない
そういうことだ。
……俺はもう行く。
続けるか、やめるか
それは自分で決めろ。
ただ、お前は
お前らしく生きればいい。
自分らしく生きてさえいれば……
お前を認めてくれるやつが
きっと、現れる。
……じゃあな」
赤「ブラックさん……!」
(ブラックと入れ替わりに、イエロー登場)
黄「レッド!」
赤「イエローさん……」
黄「あ、あんなやつの
言うことなんて気にするなよ。
お前はよくやってるから、だから……」
赤「……ありがとう、ございます」
黄「…おい、泣くなよ……」
赤「……大丈夫です、私……
がんばりますから。
自分らしく……リーダーとして」
白「……もう、戻ってこないかと
思ってたわ。
……戻ってくる必要もないし」
赤「……!
……さっきは、すみませんでした」
白「それで?
リーダーを辞める決意はできた?」
赤「……私、リーダーを辞めません」
白「!?」
赤「すぐには先代みたいに
なれないかもしれないけど……
精一杯、がんばりますから
続けさせてください、お願いします!」
白「……」
黄「俺からも、お願いします!」
(警報が鳴り響く)
『エリアDにて、不眠の使者発見。
ただちに殲滅せよ。くりかえす……』
白「……安眠戦隊
ただちに出動しなさい!」
赤「え……あの……リーダーの件は……」
白「聞こえなかったの!?
ただちに出動しなさい!
……そんなこともできないようなら
それこそリーダー
辞めてもらいますよ!」
赤「は……はい!」
黄「よかったな、レッド!」
赤「ありがとうございます!」
戦いシーン。
白「……あの子を説得したのね」
?「…………」
白「随分と甘くなったものじゃない
誰よりも……
まわりにも自分にも厳しかった
先代リーダーともあろうものが」
?「…………」
白「……待ちなさい!」
?「…………」
白「そうやって何も言わずに逃げるの!?
あの時と……
私たちの最後の戦いの時と
同じように!」
?「…………」
白「……私は、認めないわ!
あなたも、あなたの娘も!
……絶対に、私の息子を
リーダーにしてみせる!」
?「……ホワイト。いや……ピンク」
白「!」
?「戦隊に重要なのは
リーダーであるとか
そんなことじゃない。
……あれから12年たった今でも
お前はまだわかってないようだな」
白「……あなたに
そんなことを言われたくないわ。
最後の戦いの後
私たちに何も言わずに姿をくらまし
そんな姿になってのこのこと現れ
いまだ親子の名乗りを
あげることもできない
臆病者のあなたには!」
?「…………」
立ち去る影。
残されるホワイト。
白「……リーダーかどうかは
関係ないですって……?
そんなの
リーダーだからこそ言えるのよ。
……生まれながらにリーダーになれない
宿命を持った私たちの気持ちが
ブラック、あなたに
わかるもんですか……」
黄「今日も、手ごわい敵だったな……」
桃「ええ、でも勝ててよかったです」
赤「皆さん……
本当に、申し訳ありませんでした!」
黄「……レッド」
赤「私が逃げ出したせいで
出動に時間を取らせてしまって……
本当に申し訳ありません!」
青「……そう思っているなら
次からは手間取らせないで
ほしいものだな」
(青、そのまま去る)
黄「おい、ブルー!
なんでお前は
わざわざそういう言い方をするんだ!」
赤「い、イエローさん!
いいんです、私が……」
桃「……結局、どんなに止めても
騒がしくなってしまうんですね」
黒「……まあいいだろう。
こうして、少しずつ理解していくんだ
お互いを。
……仲間として、な」
桃「……そうですね。
それもまた……いいでしょう」
――つづく
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おまけ
〜補足という名の書きたいこと〜
・世襲制ヒーローの闇を書いた。……ウソですなんかの思いつきです。たぶん。
・話の都合で黒い羊が「そんな姿」呼ばわりになってますが、私個人にそういう、黒い毛の羊をおとしめる意図はありません。みんな違ってみんないい。……そもそもカラフルな毛の羊って自然界にいるのかは正直知らない。
・第三話に続く。
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