安眠戦隊SHEEP5
〜第三話・緑になれない〜



 安眠レッド(以降赤orレッド)
 …メスなのに赤
  しかも気弱なリーダー。
 安眠ブルー(以降青orブルー)
 …おいしいとこどりが好きな二枚目。
  リーダーの座を狙っている。
 安眠ブラック(以降黒orブラック)
 …クールでニヒル。
  メンバーの中で射撃率一位。
  サングラス。
 安眠イエロー(以降黄orイエロー)
 …黄色い庶民派。
  五体の中では一番普通に近い。
 安眠ピンク(以降桃orピンク)
 …オスだが世襲制でピンクになった。
  メガネ。


(基地内の自動販売機の前で悩むイエロー)

黄「……うーん
 この新発売のジュース……
 たしかに気になるんだけど……。
 このサイズで150円かー……
 高い、よなぁ……。
 うまそうではあるが……
 ここで金を使ってしまうと
 昼飯がグレードダウンせざるを
 得なくなる……うーむ……」

(横から腕が伸びてきて
 すばやくお金をいれ
 イエローの見ていた
 ジュースを買ってゆく。
 その途端、売切ランプが点灯
 そのジュースは売り切れた)

黄「あああ!おい、ちょっと待て!」
青「……なんだ」
黄「『なんだ』って……!
 今、そのジュース
 俺が買おうかどうか
 悩んでいたのに……!」
青「……そうか、なら一つ教えてやる。
 ……欲しいものは迷わず決めて動け。
 でなければ
 大事なものを失う可能性がある」
黄「…………」
(あっけにとられるイエローをおいて
 ジュースを持って立ち去るブルー)


黄「……って言うんだぜ!
 なんなんだよあいつは!」
赤(私に言われても……)
黄「大体あいつ
 ちょっと顔がいいと思って
 いい気になってるんだ!
 生意気言っても顔がよければ
 許されると思ってんだよ!
 ちくしょうかっこつけやがって……!」
赤(だから、それを私に言われても……)
黄「なあ!そう思わないか!?」
赤「……そう言われても……
 私ブルーさんのこと
 それほど知ってるわけじゃないし……。
 大体、なんで私に言うんですか……。
 ブルーさんなら
 ピンクさんとかブラックさんの方が
 親しいと思うんですけど……」
黄「……だって、他のやつらじゃ
 愚痴につきあってくれそうもないから」
赤(……愚痴だってことは
 わかってるんですね……。
 でもだからって
 私にぶつけられても……)
黄「あー、ちくしょう!
 何とかあいつの鼻を
 明かしてやらないと気がすまない!」
赤(散々怒りをぶつけておいて
 まだ気がすまないんですね……。
 私って一体……)
赤「でも、鼻を明かすって言っても
 どうやって……」
黄「……弱みを握るんだよ」
赤「え?」
黄「考えてみれば
 あいつの家庭事情とか
 全然俺ら知らないじゃん」
赤「……まあ、そうですね。
 ブルーさん、そもそもあまり
 プライベートなこと
 しゃべりませんし……」
黄「つーまーり、そこには何か
 知られたくないことが
 あるってことだろ?」
赤「……そう、でしょうか?」
黄「そうだぜ!決まってんじゃん!
 だから、俺らでその秘密を
 暴いてやろうって話さ!」
赤「……俺らって……私もですかあ!?」
黄「ああ。お前だって、
 ブルーの鼻明かしてやりたいだろ?」
赤「いや、私は別にそんな……」
黄「いろいろ言われてるじゃん。
 リーダー失格とか。
 やめたきゃやめちまえとか」
赤「でもそれは、私が言われても
 仕方ないほど
 ダメなリーダーだからであって……」
黄「よーし、じゃあ
 『ブルーの秘密を暴き隊』出動!」
赤「……結局、私の意見は
 聞く気がないんですね……」

(ブルーの後をつける三体)

赤「えーと……なんでピンクさんまで
 ついてきてるんですか?」
桃「いえ、出動、と聞くと
 条件反射で行動してしまう
 クセがついてましてね。
 我ながら、困ったクセと
 わかっているんですが……」
赤(いろいろ言ってるけど
 絶対ウソだ……
 楽しそうだもん、顔……)
黄「ふっふっふ、ブルー
 これが年貢の納め時だぜ」
赤「……イエローさん
 やっぱりやめませんか」
黄「なんだよ、ここまで来といて」
赤「だって、秘密を暴いてやる
 っていうけど
 もしその秘密がですよ
 知りたくないことだったら
 どうするんですか」
黄「……知りたくないこと?たとえば?」
赤「……たとえば、自宅が1500坪の豪邸で
 プールサイドでワインなんか片手に
 バスローブでくつろいでるとか……」
黄「……似合いそうなだけに
 余計に腹立つな、それ……」
赤「で、あまつさえ、私たちを見つけて
 『お前たちに余計な劣等感を
 抱かせたくなくて黙ってたんだ』
 とかワインを揺らして言われたら……」
桃「そんなことになったら
 我々、ただ肩を落として
 帰るだけですね……」
赤「ね、ね、そうでしょ?」
桃「ですがレッド、このあたりに
 豪邸がある、という情報は
 ありませんよ。
 せいぜい……そうですね
 大きめのマンションが
 一つ二つあるくらいです」
赤「じゃ、じゃあ……そのマンションで
 美人で年上のお姉さんに
 水商売で養ってもらってるとか!」
桃「……レッド、その発想は
 逆にブルーに失礼じゃないですか……?」
黄「まあ、確かにそんな事実が
 発覚したところで
 余計に腹立ちがつのるだけだな……」
赤「ほ、ほら、そうでしょ
 今からでも帰りましょうよ。ほら!」
黄「いや、ここまで来て帰れるか!
 どんな事実が発覚しようと
 俺はそれを見届けてやる!」
赤(……意地になってる……)

(ブルー、路地へ入る)

黄「お、路地に入ったぞ」
桃「いよいよですね」
赤(……いいのかなあ……)

(路地の先には、ボロい納屋)

赤「ここは……」
?「めぇぇぇっ」
青「ただいま」
?「めぇぇぇぇぇ。」
青「ああ、今日はごちそうだ」
?「めぇぇぇぇぇ♪」

赤「……妹、さんですね。
 毛の色が同じ青だし」
黄「あいつ
 こんなとこに住んでたのか……」
桃「それにしても……」

妹「めぇぇぇぇぇ」
青「おい、ちょっと待てよ。
 ごちそうはお薬のんでからだろ?
 まだ駄目だって……はははははっ」

赤「いつものブルーさんからは……
 想像もつかないくらい笑ってますね……」
黄「ホントだな……」

妹「めぇぇぇぇっ」
青「え?戦隊はどうかって?
 ……ああ、頑張ってるよ。
 いろいろあるけどな」
妹「めぇ……?」
青「バカ
 お前が心配することはないんだよ。
 とにかく、薬のんで
 ごちそう食べて、ゆっくり休め。な?」
妹「めぇぇぇぇ……」
青「……バカ、無理なんてしてないよ。
 ……俺はお前のためならなんでもする。
 そう決めたんだ。
 父さんが死んだ時みたいには
 絶対させない……
 もう二度と
 大事なものは失わないって……」

桃「……どうします?」
黄「……帰るか」
赤「そうですね」

(夕焼け)

黄「……まあ、意外なものは見れたわな。
 とりあえず」
赤「そうですね。
 ……ブルーさん、妹いたんですね」
桃「……我々は、戦士候補に選出された時に
 手術を受け、ほとんどの場合
 家族と縁を切りますからね……」
赤「きっと、とっても仲良しなんですよ。
 だから変わってしまった姿も言葉も
 お互いにわかるんです。
 ……いいですね、家族がいるって」
黄「まあ、全部が全部
 いいことばかりじゃ
 ないだろうけど、な」
桃「ええ、時には重荷にもなりますよ。
 でも、それもひっくるめて
 家族、なんですよきっと」
赤「……じゃあ、私たち戦隊も
 家族みたいなものですね」
黄「……え?」
赤「だっていいことばかりじゃなくて
 いろいろあって
 お互い迷惑かけたりするけど
 そういうの含めて
 一緒に頑張るんですもん」
桃「……フフ」
黒「そうかも、しれないな……」

4体「…………………」

黄「……ってうわああ!」
赤「ブ、ブラックさん
 いつからそこにいたんですか!?」
黒「……緊急招集ががかってるのに
 誰もいないから、見に来たんだ。
 いいのか、こんなところにいて。
 ホワイトが怒ってたぞ」
桃「うっ……マズいですね。
 急ぎましょう!」

(後日、基地内、自販機前にて)

黄「……にしても意外だったよなー
 あのブルーが
 あんな顔して笑うなんて……」
青「……俺が、どうしたって?」
黄「うああ!」
青「……なんだ、その反応は……」
黄「いや、なんでもないなんでもない
 お前のことなんか
 全っ然知らないから、俺!」
青「……何が言いたいんだ、お前は」
黄「いや、別に」
青「……?
 わからないやつだな……」
黄「ほっ……」
青「……ああ、忘れるところだった。
 お前が前に買いそこねてたジュース
 補充されてるぞ」
黄「え!?ホントだ!」
青「チャンスは逃さない方がいいぞ。
 じゃあな」

黄「……ムカつく言い方だが
 一応、教えてくれたんだよな……。
 妹さんの件といい……
 結構いいところも
 あるのかもしれないな……」

(ジュースを買い、口に含むイエロー)

黄「……うっ!?」

(せきこむイエロー)

黄「な、なんだ……この
 まずいを通り越して
 不快なジュースは!?」

(遠くで笑いをこらえるブルー)

黄「……ブルー……
 てめぇ知ってたな……!」
青「……俺はチャンスは逃すな、と
 言っただけだぞ。
 そんなまずさ
 一生に一度味わえるか
 どうかも、わからないだろ?」
黄「ちっくしょう……
 こんな味覚を通り越して
 心の傷になりそうなもん、
 こっちにまで味合わせやがって……!」

(ケンカになる二人)

赤「……やっぱり
 イエローさんとブルーさんは
 こうなんですねぇ……」
黒「……止めないのか、レッド」
赤「……いえ……戦隊が家族というなら
 これも兄弟ゲンカだと思えば。
 まわりが仲裁するより
 気の済むまで
 やらせたほうがいいかなって……」
黒「……本心か?」
赤「……だって、止めても
 私に怒りがぶつかるだけですし」
黒「……なるほど」
桃「……あの、戦闘訓練の時間なんですが。
 ……何勝手に始めてるんですか
 二人とも」

――おしまい


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 おまけ

 〜補足という名の書きたいこと〜

・基本的に当時そのまま。150円のジュースが高い時代でした。今や……。

・書いといてなんですが、仮にブルーが「そのジュースまずかったからやめた方がいい」などと言ってたとしても、イエローは飲んだ気がします。意地になって。

・第一話であまりめだってなかったなあ、なイエローメインの話を書こうと始まって、レッド・イエロー・ブルー・ピンクのキャラ掘り下げてたらこんな感じ……になったような。最終更新日見たら第一話2003年、第二話2004年、第三話2005年でした。最終更新日なのでいつ書き始めたか、まではわかりませんが。目安として。

・戦隊ものは子どものころは見てて、その後、友達に誘われてしばらく見てた……としても、その誘われた時期、どう考えても2005年より後なので。「特にこの戦隊タイトルに影響を受けた!」なものはありません。だいたいふんわりイメージで書いてた……と思います。ふんわり。

・ここまででおしまいです。以上、おつきあい、ありがとうございました!


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