手に入れたもの
(「かえるの絵本スキーに30の御題」作品)
――ちょっと不思議な冒険者がいる。
冒険から街に帰って早々、そんな噂を聞いて。
詳しく居場所を尋ねて、酒場まで会いに行ったことには、特別、深い気持ちはなかった。
とりあえず声をかけて、顔を覚えてもらって、それで何かおいしい話が、お宝話があったらもうけもの……本当に、それだけで。
……でも、今は違う。
あなたに会えた、そのことが。一緒に冒険した、そばですごした、その時間こそが、本当の宝物だって……そんな、気がする。
――だから、絶対に、わたさない。
正体が何だって、かえるだってかまわない。
盗賊が手に入れた宝物を、簡単に手放すと思ったら、大間違いなんだから!
コロナの街を見渡せる、お気に入りの塔の上で。
遠き竜を思わせる、強くて重い風を身に受けながらも、ルーはしっかりと、目を開き、地を足で踏みしめていた。
26:悩み、泣き、笑いを読む
28:それよりも大切なことを読む
かえるの絵本スキーに30の御題
|